伊賀流忍術の得意技「呪術と火術」

伊賀流忍者は呪術を得意としていました。伊賀は比較的都から近いにもかかわらず、山に囲まれた盆地であったことから亡命者が多く、その亡命者の中には、物部氏を祖先とする一族や渡来系民族の服部氏など呪術や奇術を得意とした一族がいました。(ここで言う呪術は催眠術や手品のような物も含まれます。)
代表的な呪術は九字護身法です。一昔前の忍術映画などで印を結ぶ忍者を見たことはありませんか?臨兵闘者皆陣列在前(りんひょうとうしゃかいじんれつざいぜん)主に、両手で印を結ぶ/右人差し指・中指を刀に見立て、九字を切る方法があります。
九字護身法は「印明護身法」「十字の秘術」とともに用いられました。

  • 印明護身法—「浄三業」「蓮華印」など5種類の印を結び呪文を唱える。
  • 十字の秘術—天・龍・虎など十の文字を手のひらに書いて、飲んだり握ったりする。

いずれも、精神統一を促し、「大丈夫」と強烈な自己暗示をかけていました。

もう一つ伊賀忍者は火術を得意としました。映画やマンガにおいて、ピンチに陥った忍者が火薬玉を爆発させて煙とともに消える(逃げる)のを見たことあるでしょうか?このような火術は実際の伊賀忍者も一番得意としていました。
火薬玉のほかには、火矢や狼煙、ほうり火矢や埋め火・さらには鉄砲など火を操るとされています。ミサイルなどが無かった時代には、火による攻撃は恐怖・ダメージも多かったでしょう。
こちらも、火薬の材料が周囲から入手しやすい土地柄、火薬に詳しい人物が多かったために発達したようです。火薬の調合方法が秘伝中の秘伝(家伝)でした。

伊賀流忍術 写真

忍者の「歩法と走法」

忍者の諜報活動は情報の収集と伝達が主です。そのため、忍び込むためのひっそり歩く技術と早く情報を送る技術を持っています。
歩くための代表的な技、5つを紹介します。それぞれ状況によって使い方は変わりますが、「狐走」「深草兎歩」については歩く音もしなかったようです。

  • 「忍び足」—足の小指から徐々に体重をおろしていく
  • 「浮足」—つま先から足を下ろす
  • 「犬走」—たって歩けないところを四つんばいで歩く
  • 「狐走」—たって歩けないところをつま先を立てた四つんばいで歩く
  • 「深草兎歩」—手の上に足を乗せて歩く
伊賀流忍術 写真

走る技術は手に入れた情報を迅速に届けるためです。忍者を「早足の物」とも言う、それぐらい忍者の走るスピードは速かった。たとえば「韋駄天」と呼ばれる忍者は、一日に50里(約200km)を走ることができたとされます。
主に訓練により早く走ることができますが、早く走る秘術・情報もありました。

  • 二重息吹という呼吸法。「吸う、吐く、吐く、吸う、吐く、吸う、吸う、吐く」のリズムで呼吸を繰り返します。酸素の摂取量も増え、余計なことを考えず集中して走ることができるとされています。さらに遠くを見て走る事も重要です。あごを引くことを目的とします。あごが上ると呼吸も乱れるとされています。
  • へそに梅干を当てる方法もあります。「早く走れるようになる」という一種の自己暗示だったのでしょう。

どちらも現代のマラソン大会などで試してみるのもいかがでしょうか?

忍者の体型、60kgまで!

忍者を想像すると「早く走り」・「戦うこともできる」・「力がある」など筋肉があり、大きいイメージが先行します。
しかし、こう考えるとイメージががわるのではないでしょうか?
天井裏・床下での諜報活動、機敏な動き、変装など。やはり大きな体型では行動しにくそうですね。

忍者は天井での活動の為、日頃から指を鍛えていました。その訓練では米俵を使っていたとされています。その米俵は約60kg。つまり、この訓練で60kg持ち上げられるということは自分の体も持ち上げられる、天井にぶら下がることができる。ということですね。

他にも聖徳太子の付き人の大伴細人は名前が体型からきていたのであれば、忍者の体型はスリムかもしれませんね。

伊賀流忍術 写真

忍者は変装の天才!

伊賀流忍術 写真

忍者は仕事に行かない日は、農民と同じ生活をしていました。仕事に出かけるときは、忍者とわかってはいけませんから周りに怪しまれないように変装をしていたのです。
街道を歩く時は民衆・農民の格好から薬売り、山伏など、場合によって色々な服装に変えていました。
忍術伝書には、七方出(しちほうで)という変装の術があり、虚無僧、出家、山伏、商人、放下師、猿楽師、常の形の7つに分類されています。
では、忍装束は?実は、伊賀地方の農民の服装に覆面をしたもので、夜に活動するときに着用しました。闇にまぎれる服装でした。

忍者の使った道具

代表的な武器は手裏剣ですが、そんなに持ち歩いていないとされています。途中身体検査されて正体がばれるのを恐れたからです。
したがって、持ち歩いてもあやしまれない武器=農具を使用していました。
ここでは代表的なものを紹介します。

忍者の道具 鎌
  • 農具—草刈り・稲刈り
  • 武器—切る・鎌4つ柄の部分を紐で縛り高いところに引っ掛ける など

手棒

  • 農具—稲からお米をとる脱穀道具
  • 武器—ヌンチャクのように振り回す

五徳

忍者の道具 五徳
  • 農具—熱した鉄瓶を乗せる
  • 武器—足を取り外側を削って手裏剣代わり

火箸

  • 農具—炭を持つ
  • 武器—振り回す・投げる

龍た(吨)

  • 農具—井戸に落とした物を引き上げる
  • 武器—敵を引っ掛ける

足鉤

  • 農具—滑りやすいところを歩く
  • 武器—敵を蹴ったり、踏んだり

萬刀

  • 農具—植木挟み
  • 武器—ふりまわす

角指/手かぎ

  • 農具—稲刈り・草刈り
  • 武器—手にはめて攻撃用

その他代表的なものに、

  • 捲き菱—逃げる時に追手が来る道にまいて、追手をはばむ
  • 苦無—土を掘る道具
  • 坪錐—土塀に穴をあける
  • しころ—木を切る

などがあります。

遁走術

伊賀流忍術 写真

忍術は武術ではありませんから、人と交戦することは最後の手段で、そのための護身術として手裏剣や武器がありました。忍者は情報を持ち帰ることを仕事としましたので、逃げ延びる術が多種あります。
その中で数点紹介します。

  • 火遁—火事や火薬(ほうり火矢・埋め火・爆竹)を使って敵を混乱させる
  • 水遁—水の中に姿を隠す
  • 煙遁—煙玉を爆発させて煙幕をはる
  • 金遁—撒き菱や、手裏剣を使った逃げ方
  • 隠形術—草叢に隠れたり(木の葉隠れ)、物陰に隠れる(観音隠れ)石に擬態する(ウズラ隠れ)など

武器を使った忍者技紹介

手裏剣

手裏剣 写真

忍者の代表的な武器手裏剣には、平型手裏剣や棒状手裏剣があります。
その形状はいろいろで、四、五、六、七、八角形とさまざまな種類があります。
また、刃先は短くそれ自体に殺傷能力はありませんが、刃先に毒を塗るなど工夫を凝らせて、殺傷能力を高めました。
そのほかにも、平型手裏剣に火縄を巻き、敵に投げつける火車剣や、平型手裏剣を組み合わせ、投擲・手に持ち相手を傷つける鉄毬などもあります。
ただ、持ち歩くと怪しまれるので、五寸釘や縫い針で代用しました。

吹き矢

扉の隙間から吹き口を出して利用するなど、姿を隠して行動する忍者にとっては適当な武器だったといえます。通常狩りなどで吹き矢が使われていましたが、吹き筒は長くて持ち歩くと怪しまれるので、笛などを利用していました。

衣類を繕う以外にも、針を火で焼いて水に浮かべて磁石にしたり、吹き矢などといった攻撃用、そのほかにも針で自分の体を刺す医療用と幅広く活用できます。
怪しまれずに持つこともできるので、忍者にとって最も使いやすい道具だったといえます。

忍者が食べていた食事

健康のため、肉・魚・乳製品・砂糖などをとらないで玄米・野菜を中心にした食事でした。また忍び込む時、居場所が分からないように体臭に繋がる匂いの強い食材は食べないようにしていた。ただ、一切断ち切っていたわけではなく、体力をつけるため食べることもあったようです。

主に食べていた物

  • アワ、ヒエ、玄米、麦など穀物、イモ類
  • シイ、クワ、グミ、トチ、クリ、カヤ、松などの木の実
  • ウズラの卵

旅途中の携帯食

当時の主な携帯食である干し飯などもあるが、忍者特有の携帯食もありました。

  • 水渇丸—のどの渇きを抑える
    梅肉を叩いた物に麦角(イネ科に寄生する菌)、氷砂糖を砕き、丸薬にします。
  • 飢渇丸—飢えをしのぐ
    人参、そば粉、小麦粉、山芋、甘草、はと麦、もち米を粉末にし、酒に3年浸します。
    酒が乾いたら乾いた物をモモの種ぐらいに丸めると出来上がりです。

忍者文字

忍者が手紙(密書)を書く時、誰かに見られても分からない様に、仲間同士にしか通用しない特殊な文字を使っていました。下記に使われていた文字「忍びイロハ」と「神代文字」を紹介します。

忍びイロハ

木・火・土・金・水・人・身(中国五行+人+身で構成)に色・青・黄・赤・白・黒・紫を掛け合わせます。

例)

 
 

神代文字

一説には、漢字が中国から伝来する以前に使われていた文字で、蛇がのた打ち回っているような形状の文字です。

忍び装束

忍び装束 写真

忍装束は、身軽で目立たないようにされていました。よく映画などでは黒の忍装束が見られるが、実は真っ黒ではなかったのです。黒の忍装束では、月明かりで輪郭が浮き出てしまうので、クレ染めの「濃紺」が主流でした。この紺染めには、ジーンズの染色がガラガラヘビ除けだったのと同じように、まむし除けの機能も果たしていたとされます。