隠 語 |
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「くり」は伊賀、深い意味 忍者は隠語を使って耳打ちした |
伊賀忍者は仲間同士の連絡によく隠語を用いた。隠語とは、ある特定の仲間だけに通じ、他の人には意味の分からない言葉のことをいう。 隠語は現代でもよく使われている。たとえば、マスコミ関係者がよく使う業界用語もそうだし、学生は友達同士にしかわからない秘密の言葉を作って遊んでいる。警察もよく使うが、それは、捜査において正体を隠すために使うのだろう。同じく伊賀忍者も隠密活動においてその正体を隠すために隠語を使用した。 忍者の隠語は一定のものではなく、時間や場所によって変えたり、その場その場で作ったりしたらしい。現代の隠語はテレビや本などを通して一般の人でもその意味を知ることができるが、忍者の隠語は知られてしまっては役に立たない。当然、記録にもほとんど残らなかった。 忍術伝書「万川集海」には「伊賀、甲賀の名前を使うてはならない」と書かれている。これは伊賀や甲賀の出身だというだけで、忍者ではないかと疑われ、警戒されてしまうからだ。地名すら言えないということは、その当時、すでに伊賀流忍術が全国的に有名だったことをうかがわせる。そこで伊賀の者であることを仲間に知らせる時に隠語を使った。これが現代に伝わる数少ない忍者の隠語の一つだ。 それは、「伊賀」を「くり」に置き換えたのである。たとえば、「私は『くり』から来た」とか「私は『くり』の者だ」といった具合に。なぜ「くり」なのか。「くり」=「栗」=「いが」という連想をするかということもあるが、それだけではない。伊賀の国から京の都と南都(奈良)ヘの道のりがそれぞれ九里(約36km)だったところからも由来しているという。また、各地の地名で「◯栗」とか「栗◯」というように「栗」のつくところには、かつて伊賀者が集団で住んでいた隠れ里(伊賀者であることを隠して普通の生活をしていた)だった場所もある。ちなみに「甲賀」を指す隠語は「郷家(ごうけ)」といった。一つの隠語にも、実に深い意味が意昧が秘められていたわけだ。 |