煙の末 3
女忍び
「くノ一」×、「九ノー」◯
忍女忍者は情報収集などで男忍者を陰から支えた
早い心変わりに注意
テレビの時代劇には、しばしば女忍者が登場する。美しい女性が画面狭しと活躍し、見る者を魅了する。でも、あのような女忍者は実際に存在したのだろうか。
忍術伝書「万川集海」の「久ノ一の術」は、間者としての女忍者の姿を伝える。男では潜入しにくいケースに、女忍びを使った。女性だと敵方深く潜入できることもあったようだ。たとえば、女中として敵方の城にもぐり込み、動静や秘密を探って報告した。また、久ノ一の術の中に「隠蓑(かくれみの)」という術がある。これは、忍者が潜入先に顔見知りの者が多くいる場合、先に潜入させた女忍びに荷物を取り寄せさせ、その中にまぎれて忍び入る方法である。女性の荷物なのでチェックも甘い。古今東西にかかわらず、男性は女性に弱いもの。戦乱期には特に女性は弱者と見て、気を許しがちだったのだろう。その特性をフルに生かしたのだ。
しかし、一方では、女性は心変わりが激しいので気をつけなければならないということも教えている。まさに、「女心に秋の空」。恋愛による心変わりで裏切られることもあったのだろう。
一般に、「くノー」というのが女忍者の隠語とされている。「女」の字を分解すると、くノーになる。しかし、本当は「九ノ一」が正しい。人体にある穴は目、鼻、口、耳など九つ。女性はもう一つ多いところから、そう呼ばれた。くノーは、後世、きれいな解釈をあてはめたのが真相のようだ。
女忍びは、情報収集や男の忍者の手伝いをするぐらいで、どうやらテレビの時代劇に見られるような、痛快に暴れまわる姿は見られなかったようだ。しかし陰の存在である忍者をさらに陰ながら助けるという、地味ながらも重要な働きを担当していた。女忍者の働きなくしては、男の忍者の活躍もありえなかったのだ。